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2017年10月18日
1,刑の一部執行猶予とは?
いままで,執行猶予といえば,刑の「全部」の執行を猶予するものしかありませんでした。しかし、
2016年6月1日から、
刑の一部執行猶予という制度が新しく導入されました(2016年6月1日以前になされた犯罪についても適用があります)。
刑の一部執行猶予とは、字のごとく,
懲役刑または禁錮刑を言い渡す場合に、
その刑の『一部』の執行を一定期間猶予する制度です。猶予されなかった期間について実際に服役し、その期間が満了すると、執行猶予期間がスタートします)。
たとえば「被告人を懲役2年に処する。その刑の一部である懲役4月の執行を2年間猶予する」という判決が出た場合、
1年8か月の期間は服役します。
そして、
1年8か月たつと,残り4か月のぶんは,2年間執行が猶予され、
2年が満了すれば、残りの4か月の執行はされない
ということになります。
2,制度の趣旨
犯罪に対する刑罰を軽くしようという考えによるものではありません。
犯罪を犯した人の再犯防止と改善更生のために、社会内処遇を実施しようというものです。つまり再犯防止・改善更生のためには,ずっと刑務所に在監させるより,社会生活をさせたほうがいいのではないか,という発想です。
たとえば、薬物事犯のような犯罪の場合、刑務所の中で薬物に触れない生活をさせた後、薬物の誘惑のある社会(刑務所の外)において生活させ、誘惑に打ち勝てるように指導することが、再犯防止と改善更生になると考えられるのです。
3,どういう場合に一部執行猶予を求めるのか?
刑の一部執行猶予は、従来執行猶予ではなく実刑相当とされてきた事案について作られた新たな選択肢です。
したがって、弁護人としては、
①全部執行猶予が相当な事案では全部執行猶予を求め
②全部執行猶予が法律上不可能な事案、または全部執行猶予が困難だと思われる事案においてのみ、刑の一部執行猶予を求めていくことになります。
4,刑の一部執行猶予の内容
刑の一部執行猶予が適用されたときには、だいたい2割程度の刑期について猶予されます。
懲役2年なら4〜6か月、懲役3年なら6〜8か月程度です。
そして、猶予期間は規定上は1年以上5年以下です。
ただ、実際には1〜3年程度が多いようです。
また、猶予期間中は、多くの場合保護観察がつきます(薬物事犯では必ず保護観察に付されます)。
5,刑の一部執行猶予の要件
(1)薬物事犯以外(刑法27条の2)
ア、要件①(前科について)
以下の㋐〜㋒のいずれかに当てはまること。
㋐前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者。
㋑前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部が執行を猶予された者。
㋒前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日または執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者。
イ、要件②(宣告刑期について)
宣告刑期が3年以下の懲役または禁錮であること。
ウ、要件③(必要性・相当性について)
犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められること。
具体的には、以下のとおりです。
㋐再犯のおそれがあること
㋑1年以上の社会内処遇期間を確保して行う有用な処遇方法が想定できること(薬物事犯、性犯罪、暴力事犯、飲酒運転については、保護観察所の専門的処遇プログラムがあるため、㋑の要件をみたしやすいです)
㋒処遇を実効的に実施できること(本人の更生意欲・処遇プログラムの受講意欲の有無・程度、過去の保護観察の実績、住居や家族等の支援の存在や暴力団とのつながりの有無といった更生環境から判断されます)
㋓犯情が重いとはいえないこと(悪質性があまりに高い事案の場合はこの要件をみたさないことになります)
※㋐と㋑が必要性、㋒と㋓が相当性にあたります。
(2)薬物事犯
要件①がなくなり、要件②と③をみたせば、一部執行猶予が適用されます。
6,保護観察
(1)保護観察とは?
保護観察は、犯罪を犯した人が、実社会の中で更生できるように、国の責任において指導監督・補導援護を行うものです。
保護観察は,保護観察官と保護司がペアで担当します。
(2)指導監督・補導援護とは?
指導監督とは、主に面接によって保護観察対象者の日々の生活を把握して、保護観察対象者が遵守事項を守り、生活行動指針に即して生活するために必要な指示等をとるほか、特定の犯罪的傾向を改善するための専門的処遇を実施するものです。
また、補導援護とは、保護観察対象者が適切な住居等を得て、そこに帰住するよう助けること、医療や職業補導・就職、教養訓練を得るよう助けること、生活環境の改善・調整、生活指導等を行うことを内容とします。
(3)順守事項
遵守事項には、一般遵守事項と特別遵守事項があります。
一般遵守事項は、健全な生活態度の保持、保護観察官や保護司との面接等、届出をした住居への居住、転居や7泊以上の旅行の際の許可といったもので、保護観察対象者全員が守らなければならないものです。
特別遵守事項は、必要があると認められるとき保護観察対象者に対して、たとえば、特定人物との交際や特定場所への立ち入り、浪費、過度の飲酒等の禁止、労働従事、通学、旅行や離職の申告、専門的処遇プログラム等が定められます。
執行猶予中の保護観察対象者が遵守事項を遵守せず、情状が重い場合は執行猶予が取り消される場合もあります。
(4)専門的処遇プログラム
保護観察期間の遵守事項に,専門的処遇プログラムを受けることが盛り込まれることがあります。
保護観察所の専門的処遇プログラムには,①薬物処遇プログラム,②性犯罪者処遇プログラム,③暴力防止プログラム,④飲酒運転防止プログラムの4つがあります。2週間に1回程度通所して,ワークブック等を用いたプログラムを受けます。また,薬物処遇プログラムにおいては,定期的に簡易薬物検出検査も行われます。