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2017年08月29日
交通事故は、誰にでも突然起こりうるものですが、加害者になってしまった人には,
民事、行政、刑事の3つもの責任が生じます。
もちろん、すべての交通事故が犯罪行為になるわけではありません。
法律は、ある一定の場合の交通事故を犯罪行為として規定しています。
1,民事上、行政上の責任について
刑事上の責任のお話に入る前に、民事上、行政上の責任について、少し触れておきます。
(1)民事責任
損害賠償責任です。
具体的には,
被害者に実際に生じた治療費、通院交通費、精神的苦痛に対する慰謝料、休業損害、後遺障害が残った際の逸失利益・慰謝料、物件損害等です。
これらの被害者の損害を金銭的に賠償することになります。
(2)行政責任
公安委員会からの免許停止、免許取消しなどの処分のことをいいます。
2,刑事上の責任
(1)刑罰の種類
自動車を運転していて交通事故を起こしてしまった場合、以下のような犯罪行為として、起訴されるおそれがあります
(平成26年5月20日以降、法改正によって厳罰化されております)。
ア 過失運転
不注意によって負傷・死亡事故を起こしてしまった場合、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金となります(自動車運転死傷行為処罰法5条)。
イ 危険運転
危険運転によって負傷事故を起こしてしまった場合、15年以下の懲役となります。また、死亡事故を起こしてしまった場合、1年以上20年以下の懲役となります(自動車運転死傷行為処罰法2条)。
ウ 準危険運転
準危険運転によって負傷事故を起こしてしまった場合、12年以下の懲役となります。また、死亡事故を起こしてしまった場合、15年以下の懲役となります(自動車運転死傷行為処罰法3条)。
エ 救護義務違反(ひき逃げ)
被害者を死傷させるような交通事故を起こしたにもかかわらず、すぐに車を停止させて、救護を行うことなく、その場を立ち去った場合、10年以下の懲役または100万円以下の罰金となります(道路交通法117条2項)。
ア〜ウの犯罪に加えて、救護義務違反があった場合、併合罪といって、刑が重くなります。
オ 報告義務違反(ひき逃げ、当て逃げ)
交通事故を起こしたにもかかわらず、警察へ報告することなく、その場を立ち去った場合、3月以下の懲役または5万円以下の罰金となります(道路交通法119条1項10号)。人身事故でない交通事故の場合も、報告義務があります。
ア〜ウの犯罪に加えて、報告義務違反があった場合、併合罪といって、刑が重くなります。
(2)危険運転とは?
ア アルコールまたは薬物の影響により正常な運転が困難な状態での運転
イ 進行を制御することが困難なほどのスピードでの運転
ウ 進行を制御する技能を有していない者による運転
エ 人または車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人または車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で運転
オ 赤信号等をことさらに無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で運転
カ 通行禁止道路を走行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で運転
(3)準危険運転とは?
ア アルコールまたは薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で運転し、そのアルコールや薬物の影響で正常な運転が困難な状態に陥った場合
イ 運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定められているもの(「てんかん」など)の影響で、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した結果、その病気の影響で正常な運転が困難な状態に陥った場合
(4)実際の刑罰の相場は?
一口に人身事故といっても様々な態様のものがあります。
具体的には、
交通事故の被害の度合い
加害者の運転態様の悪質さ
飲酒の有無
事後対応(すぐに救急車を呼び、警察に連絡したか等)
示談の成立の有無
被害弁償の程度
反省状況
交通事故の前科前歴の有無
などから判断されることになります。
たとえば、過失運転のケースですと、
初犯で、被害者の被害結果が大きくなく、示談が成立していれば、不起訴となるか、起訴されても略式手続による罰金刑となる可能性が高いです。
他方、同じ過失運転のケースでも、被害者が重症であるとか死亡しているような場合は、たとえ初犯であっても起訴される可能性が高いといえます。
また、危険運転のケースで、飲酒運転やひき逃げ、明らかな信号無視などの悪質な運転をしていた場合、初犯でも起訴されてしまうことが多いです。
特に飲酒運転は厳罰化が進んでおり、怪我が軽く、示談も成立しているという場合であっても、起訴されることが多くなっております。
また、飲酒運転の場合、被害者の怪我が重いと、初犯であっても、執行猶予が付かないこともあります。
ご自身がどの程度の刑罰となるか、おおよその見通しを知りたい方は弁護士に相談してみてください。
3,交通事故に関する犯罪の弁護について
(1)運転者に事故の責任がない場合
被害者の主張に間違いがあり、実際は運転者に責任がない場合、
たとえば運転者が交通法規を遵守して注意深く運転していたにもかかわらず、被害者から道路に急に飛び出してきてぶつかってきたという場合、
運転者には回避可能性がありません。ですから,運転者に過失がなく、犯罪とはならないということになります。
ご自身に言い分がある場合、弁護士に必ず相談しましょう。
弁護士が現地調査をしたり、検察官に証拠開示を求めて、被害者供述の矛盾点を突くなどし、運転者の無罪を主張していきます。
(2)運転者に事故の責任がある場合
反省文や謝罪文を書く
免許証や車を処分して二度と車を運転しないことを誓約する
交通事故関連の団体に寄付をする
飲酒運転の場合は断酒をしたといった事情を主張する
などして,減刑を求めることになります。
もっとも重要なことは、被害弁償と示談の成立です。
ア 民事上の示談
加害者の方が民間の自動車保険に加入している場合、
その保険会社が示談を代行し、被害者に対し、治療費等の損害賠償をします。
もっとも、民間の自動車保険に加入しておらず、自賠責保険のみであった場合、
支払額に限度があるため、被害者の損害がすべて保険で支払われるとは限りません。
そのため、自賠責保険でまかないきれない損害がある場合、その補填をご自身でする必要があります。
その交渉は弁護士に任せるとよいでしょう。
イ 刑事上の示談
民間の自動車保険会社が行う示談交渉は、あくまでも民事上の責任に関する示談交渉です。
もちろん、それによって被害弁償がなされたことは刑事事件において検察官が起訴をするかどうか、裁判官が量刑をどの程度にするかといった判断に大きく影響します。
しかし、より不起訴の可能性や減刑、執行猶予の可能性を上げるためには、
被害弁償のみならず、
お見舞金を支払い、直接謝罪する
被害者の方に対して被害届を提出しないように頼む
「本件について加害者を許す」といった文言の入った示談書を作成してもらう
ことなどを検討すべきでしょう。
また、そもそも保険会社の示談交渉は、刑事裁判の終結までに間に合わない場合も往々にしてありますので、その場合に備えて刑事上の示談も行うべきでしょう。
交通事故を起こしてしまったら、保険会社に示談交渉を任せるだけでなく、弁護士に相談し、刑事上の示談交渉も進めることをおすすめします。