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刑事裁判の流れ

2017年05月31日

刑事裁判の流れは以下の通りです。

1,裁判所への出頭
 刑事裁判(公判)は,被告人が出頭しなければ行うことができません。
 被告人が刑事裁判に臨む際,もっとも大きな違いは勾留されているか否かです。
 勾留されていれば,被告告人は拘置所から刑務官に腰縄を付けられて裁判所に連れられてきます。
 他方,在宅事件の場合,

被告人は家から裁判所まで自分でやってくることになります。このとき,服装はどんな格好がいいか聞かれることがよくありますが,特に決まりはありません。スーツがあれば,一番無難です。外出できる格好であればさしあたり問題はないでしょう。
 被告人が着席する場所は,弁護人の机の前にある長椅子です。
 なお,証人の方は出頭カードを記入の上,証人尋問の場面で呼ばれるまで傍聴席に座って待っていただくことになります。

2,人定質問
 裁判官が入室すると,書記官の「ご起立ください」という号令がかかり,法廷内の全員(傍聴人も含む)が起立して礼をし,裁判が始まります(何で裁判官に頭を下げなくてはならないのかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが,裁判官に対して礼をするのではなく,これから始まる裁判に対して礼をするのだと聞いたことがあります)。
 刑事裁判で最初に行われる手続は「人定質問」です。
 裁判官が,「被告人は証言台の前に」と言いますので,被告人は,弁護人の前の椅子から証言台の前に移動します。
 そして,被告人は起立したまま,裁判官から,名前と生年月日,本籍と現住所,職業を尋ねられます。
 この手続きは,本人確認のために行われるものです。

3,起訴状朗読
 人定質問が終わると,裁判官は被告人に対して「あなたのところに起訴状が届いたと思いますが,その内容は読まれましたか?」と尋ねます。
 起訴状は起訴が決定した時点で被告人に届けられる文書で,被告人がどんなことをして,何の罪に問われているのかを検察官が書いたものです。
 被告人はそれが届けば普通読みますし,読んでなかったとしても,弁護人から公判が始まる前に起訴状を読むように言いますので,裁判官の質問に対して「読みました」と答えるのが通常です。
 そして,裁判官は,検察官に対し,「起訴状を朗読してください」と言い,検察官が起訴状を朗読します。

3,罪状認否
 検察官が起訴状を読み終えると,裁判官が被告人に対して,「被告人には,黙秘権があります。答えたくないことは答えなくてもいいし,終始黙っていることもできます。ただし,話した内容はすべて証拠となり,有利にも不利にも扱われますので注意して答えてください」などと,黙秘権の告知と法廷内での発言に関する注意をします。
 この黙秘権の告知と法廷内での発言に関する注意をしたうえで,裁判官は被告人に対して「今読み上げられた起訴状の中で,何か間違っていることはありますか?」と尋ねます。
 これに対して被告人は,「間違いありません」とか「一部間違っております」とか「全部間違っています」と答えます。
 これによって,被告人が罪を認めたうえで,その罪の重さを審理する量刑裁判になるのか,それとも罪を争う否認裁判になるのか,裁判の争点が明確になります。
 ここから,いよいよ本格的な裁判の審理が始まります。

4,冒頭陳述
 裁判官は公正中立の立場であり,裁判が始まるまで起訴状以外,何も証拠なども見ることができません。また,ニュースで報道された事件に関しても「何も知らない」という前提で審理を行っていきます。
 そこで,まず検察官が,起訴状に書いてあること以上に詳しく事件のあらまし(検察側が考えている事件のストーリー)を説明していきます。事件当日の被告人の行動や,事件の詳細な内容の他,被告人の生い立ちなども検察官が語ります。
 検察官の冒頭陳述が終わると,弁護人の冒頭陳述の番となります。しかし,被告人が起訴状記載の事実を認めている場合,弁護側は原則として冒頭陳述を行いません(弁護人が考えている事件内容も検察官の説明と同内容だからです)。他方,否認事件の場合,弁護人は,起訴事実を真っ向から否定して無実を主張するストーリーを説明する冒頭陳述を行うことになります。

5,証拠調べ
(1) 冒頭陳述で事件のあらましが説明されると,いよいよ検察官と弁護人の各ストーリーを証明する段階になります。
 証拠には,証拠書類(供述調書など),証拠物(凶器など)の他,証人も含まれます。
 まず,最初に検察官側の証拠調べが行われます。検察官が裁判官に証拠を提出するわけですが,この際,裁判官が弁護人に対し,証拠意見を聞きます。これに対して,弁護人は「〇〇について不同意」などと意見を述べます。これを踏まえて,検察官が不同意部分を撤回したりして,その後裁判官が証拠を採用するか決めます。証拠が採用されると,検察官から証拠の要旨の説明がされますが,全文は読まれません。
 次に,弁護人側の証拠調べが行われ,検察官の意見を聞いた後,裁判所が証拠の採否を決めます。証拠が採用されると,弁護人から証拠の要旨の説明がされます。
(2) 検察側,弁護側のいずれかが証拠として証人を請求すると,証人尋問が行われます。通常は,検察官が請求した証人の方から尋問され,検察官から主尋問,弁護人から反対尋問,裁判官から補充質問という順番で尋問がなされることになります(裁判官は質問しないこともあります)。弁護人が請求した証人に対しては,弁護人から主尋問,検察官から反対尋問,裁判官から補充質問という順になります。
 証人は,証人尋問が始まるまで,傍聴席で待機してもらいます(性犯罪の被害者など,証人が顔出しできない場合は別室で待機することもあります)。そして,証人尋問が始まると,証言台の前に移動してもらい,嘘をつかないという内容の宣誓書を読み上げたうえで,尋問がスタートします。
 なお,証人は嘘をつくと偽証罪に問われるうえ,黙秘権もありません(覚えていないと発言するのは大丈夫です)。ただし,証言をすることによって家族などが罪に問われる可能性がある場合には,証言拒絶権が認められています。また,弁護士や医師などの守秘義務のある情報も話さないことができます。

6,被告人質問
 証拠調べの最後に,被告人本人の尋問を行う「被告人質問」という手続が行われます。
 被告人質問は,通常,弁護人側から質問を行い,その後検察官から質問があり,最後に裁判官から質問がなされます。
 証人尋問との大きな違いは,被告人には黙秘権があることと,嘘をついても偽証罪には問われないことです(もちろん,嘘が発覚すれば判決の内容に影響します
)。

7,論告・求刑
 被告人質問が終わると,検察官は改めて事件のあらまし(検察官側のストーリー)を語り,被告人に前科があることなどをあげ,最後に適用すべき法律をあげたうえで,「被告人は,懲役〇〇年に処すべき」などの意見を述べます。

8,最終弁論
 検察官の論告・求刑に対し,弁護人は,否認事件であれば,提出した証拠や証人尋問,被告人質問に基づいて,弁護人側のストーリーを説得的に述べ,無罪を主張します。
また,被告人が罪を認めている事件であっても,犯罪の動機や態様に酌量の余地があることや,被害回復,示談の成立,社会内での更生の可能性や,再犯可能性がないことなどを訴えて,執行猶予を付すことが相当であると裁判官を説得します。

9,被告人の意見陳述
 最終弁論が終わると,裁判官が被告人に「以上で審理を終了しますが,最後に何か話しておきたいことはありますか」と尋ねます。これまでの審理では,被告人は質問されたことにしか答えることができませんでした。この意見陳述の機会は,被告人が自分で自由に発言できる唯一の場です。
 被告人は,無罪を主張している場合は,改めて自らの口で無罪であることを訴えます。また,罪を認めている場合は,反省の弁や,被害者に対する謝罪,社会復帰の誓い,二度と罪を犯さないことの誓いなどを述べます。
ここで話したことは判決に影響しますが,何も話さないこともできます。
 被告人の意見陳述が終わると,刑事裁判の審理は終了します。

10,判決
 1番から9番までの手続きは,否認事件でなければ,1日で終わってしまうことが多いです。
 そして,判決は,多くの場合,2週間前後たった日に言い渡されますが,1週間程度で言い渡される場合や,1か月以上先になる場合もあります。その日程調整は,審理が終了した後,裁判官と弁護人,検察官との間で話し合ってなされます。
 判決日には,再び被告人は出頭しなければならないわけですが,審理がなされることは通常なく,人定質問をして本人確認をした後,裁判官が判決文を言い渡して5分から10分程度で終了となります。
裁判官によっては,「説諭」といって,判決文の読み上げとは別に説教のようなことを被告人に対して行う場合もあります。
これにて,刑事裁判のすべての手続きは終了となります。