月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
---|---|---|---|---|---|---|
« 6月 | ||||||
1 | 2 | 3 | ||||
4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
最近の投稿
2017年08月14日
盗撮とは,難しい法律用語でいえば,
人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせる方法で、通常衣服で隠されている身体や下着を、撮影する行為
です。
ちなみに,神奈川県では、他県よりも盗撮行為の規制が厳しく、
住居、浴場、更衣室、トイレ等、通常衣類を脱ぐ場所の撮影について、脱衣前の撮影も,盗撮行為(犯罪)としております。
2,具体的に何が盗撮にあたるのか?
駅や商業施設のエスカレーターにて、
女性のスカート内をスマートフォンやカメラで撮影する行為や、
トイレの個室内や更衣室にカメラを設置して女性を撮影する行為
等が盗撮の典型例です。
また、下着や裸の盗撮ではなくても、公共の場所で許可無く女性を撮影した場合に有罪となる例もあります。
最高裁判所平成20年11月10日の判決事例では、
ショッピングセンターにおいて、
少なくとも5分間、40メートルあまりにわたって背後から女性を付け狙い、
女性の背後1〜3メートルから、
細身のズボンを着用した臀部(お尻)を
約11回撮影した行為
が,罰金30万円となりました(北海道の迷惑防止条例違反の事案です)。
衣服を着用している部分の撮影が迷惑防止条例違反となるか否かの基準は、被害者が行為に気づいていれば、著しく羞恥し、または不安を覚えるといえるかどうかです。
具体的には、女性の胸部や下半身を強調したようなかたちで、しつこく撮影すれば、迷惑防止条例違反になるといえるでしょう。
3,盗撮したらどのような罪名になるのか?
(1)都道府県による違い
東京都では、
公共の場所(駅やバス車内等)で盗撮した場合は迷惑防止条例違反となり、私的な場所(住居、職場のトイレや更衣室内等)で盗撮した場合は軽犯罪法違反となります。
他方、神奈川県では、
公共の場所でも私的な場所でも迷惑防止条例違反となります。
このような違いがあるのは、各都道府県によって、迷惑防止条例の内容が少しずつ異なっているためです。
(2)東京都の場合
公共の場所での盗撮は、迷惑防止条例違反となり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます(常習犯は、2年以下の懲役または100万円以下の罰金)。
私的な場所での盗撮は、軽犯罪違反となり、拘留(1日〜30日未満の身体拘束で、懲役と違って刑務作業はありません)または科料(1000円〜1万円未満)に処せられます。
(3)神奈川県の場合
盗撮が行われたのが公共の場所でも私的な場所でも、迷惑防止条例違反となり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます(常習犯は、2年以下の懲役または100万円以下の罰金)。
つまり、神奈川県の方が東京都よりも罰則が厳しいといえます。
(4)建造物侵入罪
トイレ等にカメラを設置するために立ち入った場合、迷惑防止条例違反のほか、建造物侵入罪も成立します(3年以下の懲役または10万円以下の罰金)。
4,見つかったら逮捕されるのか?
盗撮が見つかり、警察に通報された場合でも、逮捕されることは稀です。
多くの場合は、パトカー等で警察署に行って取り調べを受け、その日のうちに自宅に帰されます(鉄道警察に取り押さえられた場合は、まず鉄道警察が取り調べを行います)。
もっとも、現場から逃走しようとしたとか、盗撮したことが明らかであるのに否認をしているとか、身元不明の方であるとか、常習である等の事情があると、逮捕されることもあります。
現場での対応は,痴漢の場合を参考にしましょう。いきなり逃げてはいけません
→詳しくはこちらの記事をご参照ください
5,ばれたら刑務所に行くのか?
起訴されるかは検察官の判断になりますし、懲役刑になるか罰金刑になるかは裁判官の判断になりますから、絶対こうだとは言えませんが、今までの経験からすると、以下のような相場感となります。
(1)初犯
ア 示談が成立した場合
不起訴となる可能性が高いです(前科がつきません)。
なお、盗撮の示談金の相場は、多くは10万円から30万円前後ですが、被害感情の強さや、態様の悪質さ等によっては、50万円以上になることもあります。
イ 示談が成立しなかった場合
示談が成立した場合に比べ、起訴される可能性は高くなります。しかし、被害弁償金を受け取ってもらった場合は不起訴になる可能性があります。また、被害弁償金を受け取ってもらえなかった場合でも、法務局に被害弁償金を供託することで被害弁償をしたのと同じ効果を発生されることができます。
起訴された場合でも、初犯の方の場合は、主に略式起訴での罰金刑となります(30万円前後が目安になります)。
ただし、特殊な盗撮専用機器を使用していたとか、多数回盗撮していたといったように態様が悪質であると、刑が重くなるおそれもあります。
(2)前科のある場合
盗撮の前科が1件あっても、示談が成立すれば、不起訴になる可能性が十分あります。
しかし、2件以上の前科があると、示談が成立しても、50万円程度の罰金は覚悟しなければなりませんし、懲役刑となるおそれもあります。
6,よくある質問
(1)押収されたスマートフォンに他の盗撮画像が残っていたのですが、再逮捕されることはありますか?
余罪があっても、盗撮画像から被害者が誰か警察が特定することは困難な場合が多いです。また、そもそも警察が捜査を開始するのは被害届が出されてからであるところ、被害者に見つかっていない盗撮の場合は被害届が出ていないのが通常です。
したがって、押収されたスマートフォンに他の盗撮画像が残っていたとしても、ほとんどの場合、立件されません。
(2)スカートの中にスマートフォンを差し入れただけで撮影していない場合や、失敗して床しか写っていなかったでも犯罪になるのですか?
撮影目的でスマートフォンをスカートの中に差し入れた場合、結局何も撮っていなかったとしても、迷惑防止条例違反となります。
また、個室トイレにカメラを設置したけれど誰も写っていなかった場合も、同様に迷惑防止条例違反になります。
神奈川県では、このような場合でも、撮影した場合と同様に1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
東京では、実際に撮影していない場合は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金と、撮影した場合よりも軽い罰則となっています。
比較すると、神奈川県では盗撮の規制が厳しくなっているといえます。
(3)盗撮が見つかってしまいました。家宅捜索されますか?
盗撮が見つかり、押収されたスマートフォンやカメラに保存されている盗撮画像や映像が多数だった場合
盗撮した画像や映像をインターネット上にアップロードしていた場合など、
悪質な事例では、家宅捜索が行われることもあります。
7,えん罪に注意
風景写真を撮ったら、たまたま女性の下着が写ってしまいました。女性が撮影されたことに気づき、警察に連れて行くと言ってきました。このような行為は盗撮にあたるのでしょうか?
目的が風景を撮ることにあれば、盗撮の故意がありませんので、盗撮にはあたりません。
写真を撮った経緯や、全体の撮影状況、下着の写り方などから、あえて下着を撮ろうとしたのではなく、たまたま写ったものであると証明できれば、迷惑防止条例違反で罰せられることはありません。
このようにえん罪の疑いをかけられたときは、決して逃亡したりせず、冷静に対処したうえ、早期に弁護士に相談し、捜査機関に対して適切な主張をしてもらうことが非常に重要です。
8,盗撮ハンターに注意
盗撮を行ったと思われる人物を見つけて、法外な示談金を請求する盗撮ハンターと呼ばれる恐喝グループがいます。
しかし、盗撮ハンターの行為は立派な恐喝です。法外な示談金の要求には応じず、弁護士に相談してください。
9.最後に
盗撮は、比較的刑罰の軽い犯罪です。
しかし、態様が悪かったり、変に否認をしたりすると、逮捕されたり、勾留期間が長引いてしまったり、その後の生活を台無しにしてしまうおそれもあります。
また、起訴されて前科がつくかどうかや刑罰がどれくらいになるかは、示談の有無が非常に重要になってきます。
示談を成立させるには、被害者と連絡を取る必要がありますが、被害者の連絡先は弁護士でないと知ることは困難です。
盗撮は、適切な弁護方法を取れば事態を大きくせずにすむ犯罪だからこそ、早期に弁護士を依頼することをおすすめいたします。